不妊症の定義を正しく理解されてますでしょうか

2016年10月13日

不妊検査で不妊症かどうかが分かるとお考えの方がおられますが、不妊検査では不妊かどうかは実は分かりません。”妊娠しにくい状態があるかどうかが分かる”のです。ただし検査によって分かることは実は限られています。”妊娠しにくい状態”とはどういう状態でしょうか?例えば不妊検査の一つ卵管造影検査(HSG)を行って、卵管が詰まっていたとして、閉塞が片方であれば”妊娠は不可能ではないがしにくい”、両方閉塞であれば”自然妊娠は不可能”ということが分かります。また不妊検査の一つである精液検査を受けると”精子が少ないから自然妊娠はしにくいかもしれません”とか、”精子がほとんどいないので自然妊娠はまず不可能です”などということが分かります。不妊症とは”避妊しないで1年以上妊娠しない状態”なので、不妊検査が正常か異常かに関係なく1年以上経って妊娠しない人は全員不妊症ということになります。(検査が正常か異常かということは関係ないということになります)。また、不妊検査で妊娠しにくい状態の全てが分かる訳ではありません。不妊検査はあくまでも”ごく一部の”妊娠しにくい状態があるかどうかが分かる検査である・・・とご理解下さい。
さて、”ブライダルチェック”というものがあります。施設にもよりますが、ブライダルチェックは一般的に不妊治療の初期検査と重複するようなものを含んでいます。”ブライダルチェックで異常ないと言われた=私は不妊症ではない”と解釈される方が結構おられますが、上記の理由からこれは間違いです。ブライダルチェックは一般的にこれから結婚を控えておられる方や結婚間もない方が受けられる検査と思われますが、結婚前(同棲期間含む)から避妊をしない性交渉のあった期間が1年近く経っている方はブライダルチェックよりも一歩踏み込んで不妊症の検査治療に進まれることをお勧めします。また、概ね35歳を超えてからご結婚された方では、ブライダルチェックよりも一歩踏み込んで不妊症の検査治療をすぐにでも始められた方が将来的にお子さんを持てる可能性が高くなります。(米国生殖医学会(ASRM)ガイドラインでは、女性の年齢が35歳以上のカップルでは概ね結婚半年を境に妊娠しない場合は不妊症としての対応をすることが望ましいとされています)
不妊検査は月経周期の中でできる時期が限られているものがありますが、検査を希望したいと考えた場合は月経周期のどの時期でも受診は可能です。(その時に出来る検査を効率良く行います)。先日ある患者様で他院に不妊を訴えてかかられたところ、基礎体温を3ヶ月間つけてから再度お越しくださいと言われたという方がおられましたが、かなりナンセンスだと思いました。(基礎体温から得られる情報から比べると失った3ヶ月間という時間があまりにも大きすぎると思いました)。3ヶ月あれば一通りの基本検査は全て終了していたと思いますし、この間に一般不妊治療で妊娠できる方(体外受精を必要としない方)の半分ぐらいは妊娠している可能性も考えられます。(タイミング法や人工授精でうまく行く人は最初の3、4周期のうちに妊娠する人が多いです)。妊娠は時間との勝負だということ、実はあまり知られていないように思います。半年ぐらいのスパンでAMHが結構下がる方もおられます。
外来の限られた時間の中でなかなかお伝えできない意外と知られていない?または多くの方が誤解されている?と思われるような事実を今後も情報発信していきたいと考えています。

from佐久エンゼルスクリニック